社会のフラット化が進展するグローバリゼーションにおいて、文化や習慣、宗教などの「差異」は強みになる一方で、これまでになく人々の間に摩擦を引き起こしています。差異を前提に、互いを理解し尊重する。それこそグローバル社会において最も重要な原則であり、また多様性を増す国内社会においても必要な姿勢ではないでしょうか。また、冷戦の崩壊とグローバリゼーションの進展で、あらゆる国家が他国との関係を抜きに存在し得ない時代が到来し、良好な外交関係を可能な限り多くの国との間に築くことの重要性は、いかなる国にとっても増しています。
私たちは、「国と国との関係も、人と人との関係から始まる」という信条のもと、多様性を増す国際社会において互いを理解し尊重する姿勢を持ち、自国を代表して諸外国と良好な関係を築く役割を果たすことのできる人間こそ、これからの日本に、そして世界各国に必要なのではないか、そしてそのような人間こそ21世紀にふさわしい「グローバル・リーダー」なのではないかと考えるに至りました。
グローバル・リーダーは単にスキルを持った人間のことを指すのではありません。差異を前提に互いを理解し尊重する態度や、急激な環境変化の中で柔軟に問題に対処する姿勢といった人格を含む、人間性そのものなのです。
ですからグローバル・リーダーを一朝一夕に形成することはできません。それは長期的な人間関係や人格形成・学習プロセスを通じて形成される人間性だからです。そこで私たちは、将来の世界を担う可能性と意思を持つ大学生が一堂に会する国際会議を「起点」として、数年~数十年の長きにわたりプログラムへ関与することを通じて一人ひとりがグローバル・リーダーへと自律的に成長できるような場を、そして彼らが人間的な絆を深めてゆくことのできるような場を創造することを決意しました。
私たちがそのような場の創造に取り組むに際して基軸としたのは、「一対一ではなく多国間のプロジェクトであること」「一会議で終わらない長期的なプロジェクトであること」「これまでにない国家間関係を積極的に構築するプロジェクトであること」という3つのコンセプトです。
プロジェクトを多国間で行うことは多様性を体感する上で不可欠であり、前述の通りその長期性も欠かすことができません。加えて、これまでの外交的枠組みが徐々に通用しなくなる中で、従来は比較的疎遠だった、あるいは一方的であった国家間関係を、相互の理解と信頼に基づいた対等で双方的な関係に進化させることの必要性から、新たな関係を積極的に構築する意義は大きいのではないかと考えました。
我が国では国際的プレゼンスの低下が問題となり、日本の将来について悲観的な声が蔓延しています。日本人は「外交下手」とも「内向き」とも評されます。さらに、東日本大震災で露呈したのは「世界に対して、必要な情報を正確に発信する力」 「世界の言論と行動をリードし、よりよい国際社会を構築して行くリーダーシップ」の不足でした。各界において国を背負い国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成が、最も急務になっている国こそ日本だと言えるでしょう。そのような意味でこのプロジェクトを日本人自身が推し進める意義は大きいはずです。
しかしそれだけではありません。日本は世界に先駆けて第二次世界大戦後の高度成長を成し遂げた国であり、また世界に先駆けて金融危機や超高齢化を経験している「課題先進国」なのです。日本が直面してきた、そして直面している課題の多くはこれから世界が直面する課題です。そこで日本の知見や経験を大いに生かすべきではないでしょうか。そのような意味でこの「日本発のプラットフォーム」は日本にとっても、世界各国にとっても大きな意義があるものだといえるのです。
私たちはこの長期的な場において、各国を代表して参加する人々に対し「経験」「知見」「人的ネットワーク」を提供し、一人ひとりが自律的に成長できる環境の整備に尽力します。そして世界各国で求められているグローバル・リーダー育成の一端を担い、将来的にリーダー達の水平な世界的ネットワークを築き、ひいては多様な国々同士の良好な関係に結実することを目指します。
2010年9月1日
ファウンダー 森下 裕介
(2013年1月1日 一部改訂)